現代文だけはいつも一番だった《取次師》~序章~

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私は学校の成績があまり良くなかった。

そのせいで、小学校の通知表を破った。

そのせいで、今もセロハンテープでとめられている。

そのせいで、公立高校にも落ちた。

そのせいで、何回英検3級を受けても結局とれなかった、4級どまりだった。漢検も4級までだった。

英語も数学も、化学も古典もすべてできなかった、漢字も苦手だった。でも現代文だけは、小学生のころいつも満点だった。テキトーに書いた作文が次々賞に選ばれた。中学2年の弁論大会でも、私の書いた文章が選ばれて、私は代表になった。

高校の実力テストでも、ほとんど9割は正解だった。他の、教科は目もあてられない状況で、古典や漢文もいつも0点だったけど、国語の偏差値は良かった。

私の頭の中には、いつも電話取次師のような人が住んでいて、いつも魅力的なフレーズを提供してくれた。この能力は、文章を書くのに役だった。成績優秀者でも思いつかない言葉を提供し、さらにそれを二段階に熟成してみせた。

皆、私の文章をみて、驚き、まごつき、そして放り投げた。

高校三年のときもそうだった。私が大学向けに書いた自己推薦文を国語の先生にみてもらわないといけなかった。

文章を読んだ先生は

「俺には難しくて、これがいいのか悪いのか分からない。」

そんなことを言った。

「あ~なんか凄いんだけど、う~ん、これは、、ごにょごにょ、、。」

とかなんとかいって放り投げた。

私は、それを見て、やってやがったと思った。

とにかくそう思った。

自分の力をみて、気恥ずかしい思いになった。

電話取次師は、私に言った。

「次は何を取り次ぎますか?」

私は答える

「普通の人が分からないように、でもわかるように」

取次師は言った

「それじゃああなたにも分からない、あなただって普通の人だ。身のほどをわきまえなきゃいけませんよ、あんた」

私は答える

「そう、私だって分からない、でもそれでいいんだよ。私には分からなくても君がいるじゃないか」

取次師はいう

「そういうことならいくらでも取り次ぎますけど」

「ただし、条件があります」

 

「なんだい?君は空想の中だ。なんでも好きにできるよ」

取次師

「ひどく寝てないんですよ、だから少し眠らせてください。あなたのような人が、いつも私を呼ぶんです。おいっおいっと呼ぶんですよ」

「それならたやすいことだ、ゆっくり休むといい。ところでどのくらい寝てないんだ君は?」

取次師は言った。

「はい、昭和からずっとです。」

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