無職がまた美術展行ってきました。
年間フリーパスを買ったし、行かないともったいないということでバイトの面接のついでに八王子市夢美術館へ。
銅版画家、清原啓子
今月から銅版画家の企画展で、清原啓子という八王子出身の銅版画家でしたが、恥ずかしながら版画の知識がないために知りませんでした。
作品の完成度からみて、たぶんけっこう有名な人だと思います。
≪卵型のスフィンクス≫ 1982年 エッチング 八王子市夢美術館蔵
夭折の銅版画家
女性の銅版画家ですが、異常なまでの精密さが特徴で、多摩美の絵画3回生で版画を専攻してから10年以上の期間があるにもかかわらず、作品をわずか30点しか残していません。
入念な構成と、作品の小ささ、少数精鋭の姿勢から真っ先にイメージしたのがオランダの画家であるフェルメールでした。
≪孤島≫ 1987年 エッチング 八王子市夢美術館蔵
※絶筆
自殺か?
死因については色々調べてはみたのですが、病歴がないことやネット上に情報がないということで自殺ではないかと考えました。
これだけストイックな製作ができるというのは、もう精神を病んでいないという方がおかしいと思うのです。
個人的には超人的な技巧にもう少しスキが見えるぐらいの方がいいかなと思うんですよね、少し均質的過ぎて作品を見づらいし、ポイントがつかみにくい。それが個性だし長所であると思うんですが、悪く言えばどこをみていいのか分からないし、その病的なまでの性質というか天性のものが彼女を死に追いやったんだろうことは容易に察しがつきます、それがたとえ自殺ではなかったとしても・・・。
≪後日譚≫ 1980年 エッチング 八王子市夢美術館蔵
影響を受けた画家も展示されていた
清原啓子が最も影響を受けた版画家ジャック・カロ、ギュスターブ・モローやオディロン・ルドン、ルドンの師匠であるロドルフ・ブレスダンの版画も展示されていました。
特にモローは水彩画が国内から一点来ており、さすがの技術でした。
ギュスターブ・モロー ≪救済される聖セバスティアヌス≫ 1885年 水彩、グァッシュ 群馬県立美術館蔵
ルドンの版画ヤバかった!
世界的な版画家はやはり凄かったです、とくにルドンの版画が際立って見えました。過去に観たことがあると思うんですが、今回のように版画ばかりの中にあるとその特異さが目立ちました。
ルドンの版画は白黒なのに色を感じるんですよ、それから得たいの知れない生命感といえるようなものが描かれた怪物から感じられ、やはり手数でも才能には全く叶わないと感じさせられました。
オディロン・ルドン ≪『聖アントワーヌの誘惑』第一集 Ⅸ いたるところで瞳が焔をはく≫ 1888年 リトグラフ 群馬県立美術館蔵
まとめ
展覧会を鑑賞した直後は、最後にルドンやブレダンの展示があったことで、清原啓子の印象は薄かったんですが、半日ぐらいたった辺りから急にまた見たいと思わせるなにかに気づきました。
≪領土≫ 1981年 エッチング 八王子市夢美術館
夭折したということは、単に技術だけではない命を削るようななにかを作品に刻んでいたのでしょうか。そのことから、やはり本物であり、確かな才能もまた備えている美術家だと認識できました。
※詳細サイト、清原啓子の宇宙
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