クモの こと
同居人が珍しく風呂の排水溝近くにいた、私が前々回風呂掃除をしたときであるから、一カ月ほど前かもしれない。風呂はシャワーしか使わないので、ユニットバスの浴槽の外にある排水口はほとんど汚れないのだ。
私は内心めんどくさいな~と感じつつも、なんとか非難させようとしたが捕まえることはできずに見えなくなってしまったので、思い切ってシャワーを流した。
するとどうだろう、クルクルと同居人が水流に乗って流れてくるではないか、ものの5秒ほどで同居人は排水溝い吸い込まれてしまった。
私は
「アッ!しまった」
と思ったが後の祭りで、排水溝の蓋を外してはみたがもはや生存は絶望的だった。
同居人は家の壁などにいる黒くて小さなクモのことである。
あんまりいつも壁の決まった場所にいるので、そのうち同居人として意識するようになっていた。壁の下にはエアーベッドを置いてあるので、いつも挟んでしまったのではないかとヒヤヒヤしていたが、なんとか半年以上そんな事故はなかった。
今回、いつもはみない場所にいたものだから、私の中でいまいち対策が甘くて同居人を殺してしまったのだが、彼は同居人ではなくて別のクモなのではないかという期待を持っていた。実際クモが複数匹いるかもしれない可能性はまえから考えていたからだ。
しかし、この事件から一カ月がたっているが私の期待通りにはなっていない。それどころか想定外といってもいいかもしれない、というのもこの事件以来一度もクモを見ていないのだ。クモが一匹しかいないというのも正直意外だったし、新規で入ってくるクモがいないというのも意外だった。
とくにお昼頃はいつも決まった壁で過ごしていたクモ、彼はたしかに私が殺してしまって、もう二度と戻ってはこないことを思うと、悲しみと後悔の念で自分をせめてしまう。
死の数日前も、その独特な動きを観察して一人で真似をしたりして遊んでいたのだが、あの穏やかな午後はもう二度と戻ってこないことを思うと、私はとても悲しく、このことを考えるといつも心は泣いている。
関連記事