以前、未来編の感想を書いてみたが、この記事が人を集めているようなので(このブログの中ではあるが)とりあえず、所有している鳳凰編と宇宙・生命編も書いておこうと思う。
『火の鳥(鳳凰編)』【手塚治虫】を読んだ感想
過去にはブッダや火の鳥シリーズも手にしていた私が、近年にまず読んでみた最初の作品である。
テレビがきっかけだった
きっかけは、『100分de名著』というテレビ番組で取り上げられているところをたまたま見たからである。番組中でも手塚治虫の最高傑作と惜しげもなく称賛され、生命や宗教、善悪にテーマをとったその普遍性は、読まずにはおられない感銘を受けた。
すぐにでも読みたいところであったが、無職の身分で時間を要すこととなったが、まず一冊だけでも欲しいと思って購入した。
火の鳥は内容を消化するのに時間がかかるので、一冊づつ購入するのも良いものだと思う、内容が深く染み入っていくのは、3度、4度と読み返してからだろう。
我王と重なる自分
個人的に、我王という人物がどうしても自分とだぶって感じてしまう。もちろん私はこのように強い人物ではないが、大きな問題を抱えていた時期があった、それは高校生までさかのぼらなければならない。
逆襲の〇ボー
〇ボーというのは高校生までの私のあだ名(〇の部分に名前の頭文字が入っていた)である。当時、宗教性に目覚め始めていた私は、浅はかな間違った仏教などの解釈により
≪下等な生物(当時の自分には虫などの小さい生物)を抹殺して輪廻に解放せよ≫
という大義をふりかざし、下等生物解放戦線を自称して主に昆虫殺戮を繰り返した。
その様子にオタクの同級生たちは、ガンダムのシャアにならって、
- 『赤い〇ボー』
- 『逆襲の〇ボー』
として頭がおかしいやつとして恐れられさえした。
教室に蟻でもいようものなら、それらの生物は次々と私の手によって抹殺された。
友人「〇ボーもうそんなことはやめろちゃ!」
クニヤメ「命を開放して、人間に生まれかわらせるうぃー」
などという完全にくるっている高校生の私の姿があった。
「〇ボーが成績が悪いからって殺されたらどおするかちゃ、そんなの間違っちょー!」
といって友人たちから非難された。
自分の目標や理想を達するために他の命を退けるという行為は、どんな生物もやっていることだが、当時の過激な行動は、鳳凰編の前半で平然と人を殺していく我王と重なった。
鼻の病
我王が患い、命の危険すらもあった酒さのような症状(赤鼻、肥大化等)にも私との共通点がある。酒さは、たんなる皮膚病であって命の危険などないが、手塚治虫のイメージのもとにあったのは間違いない。こちらの記事に詳しく書いているが、私も恐ろしく苦しめられたのだ。
仏性への目覚め
私が仏教に目覚めたのは、20代半ばぐらいでなかろうか。
読書などで、悟りや仏教についての知識などはだいたい勉強して、生活にも瞑想などを取り入れていった。しかし、我王が師匠が亡くなることによって得た生命賛歌というようなものは、ついぞ最近までなかった。それが感じられるようになったのは、株で大損をして退場してからである。
生きていること
それから、小さな虫をみてもなにかとてつもなく強い光を発しているように感じられるようになった(実際に光は感じない)。一番最初にそれを感じたのは天道虫だったが、最近は小さな蜘蛛、植物などにも感じるようになった。
期間工時代に聞いた
「自分の子供はいいぞ~なんかしらんけど一人だけ光っとるんじゃ~」
という話はこういうことなのかなと感じた、ずっと見ていられるし飽きないのだ。
終盤、我王が朝日を見て涙した時の言葉である。
「なぜおれは泣くのだろう」
「なぜこんなに天地は美しいのだろう」
「そうだここではなにもかも・・・・」
「生きているからだ!」
私が同じように生命を感じているのかは分からない。
もし我王と同じような状態だとすれば、私が誰よりも生き物を殺してきたからかもしれない。ヘビだけで100匹以上は殺しているはずだ、カエル、蟻、魚など、豊富な自然の中で私より殺した同世代はいないだろうと思う。
清濁併せ飲んで無を選ぶ
私は今、他の生命を意のままに使う人間が憎い。この苦しみの世界の中なら、何もない無を選びたいとさえ思う。このような考えは、自分自身が社会に適応できていないこともあるかもしれないし、根本的な思想でもあると思う。
私はついに地球に隕石を落として人間を駆逐しようとしたシャアになったのかもしれない、そんなことは良いことだと思わないが、気持ちは分からないでもない。
生きることを選んだ我王
我王は絶望と苦しみを生きて、愛する者にも全て先立たれても生きることを選んだ。
自分もそれが理想ではあると思う、そして大事なことが私もまだ生きているということだ。明日生きているか、10年後生きているかなんてどうでもいい、今この瞬間に、私が生きているということである。
使用画像©『火の鳥』鳳凰編