中国では寝そべり主義という言葉が流行になるほど、社会的な閉塞感が急速に広がっている。
(最も日本は30年以上閉塞の中にいるのだが、中国にしてはということだ)
もっとも中国の場合は、10年後も、30年後も一人当たりのGDPは日本を超えることはないとされており、それなりの成長が続くことが予想されている。
日本のように税金を含めるとマイナス成長、つまり実質賃金が下がるという現象は起きないと言われている。(日本のように給料が下がるというのは、本当に特異な現象だ)
中国社会の内巻化と競争
最近中国では、現代社会を表す言葉として
”内巻化”と呼ばれる言葉が流行している。
この言葉は適当な日本語訳が存在しないことで有名である。
社会が一定水準以上に成熟し、誰もが過激な競争をしなければ普通の生活をすることが難しい社会。
‥‥無理に訳すとそんな感じになる。
こちらの記事でも現代中国を生きる若者の苦労に触れたが、問題は住居問題だけではない。
受験や就職活動でも、日本とは比較できないような競争が待っている。
”わが子を国家重点大学へ”
という親や社会の共通理念が日本以上に強く、大部分の子供がその競争に巻き込まれていくのだ。
しかし、現場感覚で見ていると、国家重点大学に入るというのは並大抵のことではない。
日本でいう東大京大阪大などに入るようなものである。
当然多くの学生は挫折してしまうが、次は国家重点大学の大学院を目指して、また激しい競争をすることになる。
また、当然そこから堕落したものは、一部が寝そべり主義というカテゴリーの社会問題へと移行していく。
エリートから挫折して、大学院に合格せずに勉強を続けている学生が多い。
彼らがニート化していくという問題も、今後増えていくだろう。
中国の80年代生まれは日本の50年代生まれ
中国の現代の若者に対して、1980年代生まれの中国人は本当に幸運だ。
彼らが学生だった時代は、だいたい2000年代前半から半ばぐらいである。
社会がまだ成熟していなかったため、新しい仕事や施設が次々と成立した。
多くの大学が設立され、新しい仕事のポストも次々と誕生した。
その恩恵を最も受けるのが、当時の新卒や若者達だった。
彼らは今より比較的苦労なく、国立大学や公務員試験、大企業に通った。
日本の50年代生まれ
中国の2000代の初頭の姿は、日本の1970年代と重なる。
1970年に社会に出た日本人(50年代生まれ)も、相当に恵まれていたはずだ。
特に70年代半ばまでは高度経済成長期の真っただ中である。
中国なら2000年代半ばに大学を卒業した人は、現在大学の教授や助教授になっている人が非常に多い。
その時代でも大学に新しい学部などの設立が続いていたためだ。
現代とくらべて競争は無いようなもので、大学生の数も10分の1である。
2000年代の後半ではもう時代の恩恵を受けた人は少ない。
これが時代を下るごとに大卒者が一般的となり、激しい競争となっていく。
中国社会は日本の30年前
中国社会を見るには日本の30年前をみることが有効かもしれない。
しかし、冒頭述べたように中国の成長はまだまだ続いていく。
それは、30年前の日本と違って一人当たりの経済力がまだ3分の1しかないからである。
従って個人の収入は1.5倍、2倍と順調に増えていくはずだ。
しかし、社会の趨勢では差がない。
いわゆるいい仕事や良い大学に入るのは難しくなってしまった。
ちょうどそれは今から30年前の日本をみればよく分かる。
当時の日本は1990年代、ちょうど就職氷河期の世代である。
中国も少しずつ、社会がうぃ~を許さない時代になっていくだろう。