2018年3月、私は初めての中国赴任を前に、大学の担当者とWeChatでやりとりをしていた。
彼の名前はローマ字でMaurizio。
マウリシオと読む。
久々にこの名前の響きを聞いて、なんだかテンションがあがる。
懐かしい。
彼は大学の国際外事の担当者であった。
当然この名前からして、イタリア人なのだろうか?
このアイコンも国際派で、中国という雰囲気を感じさせない。
彼は間違いなく欧州の人だな、ウンウンと満足そうに妄想を膨らませていた。
彼は英語を操って私に連絡してきた。
今となっては信じられないことだが、当時私はまだ中国語よりも英語の方ができたからだ。
…いやいや、英検3級もたぶん合格しないレベルである。
正確にはどちらともできないと言っていい。
そして、それは現在も続いているが…。
イングリッシュネームと中国
wechatには翻訳アプリがあるので、そのおかげで空港で合流することができた。
彼は最初にロシア人の外国人教師と合流してから来るという。
ロシア人の女性も、同じ日に空港に到着するようだ。
私はレストランの2階席のようなところでビールを飲んでいた時、それらしい3人の集団が現れた。
金髪の美女と、マウリシオは?
あれ?
なんか金髪美女とさえない中国人のオッサンが2人でウロウロしている。
まさか・・・・・
それでもすぐには現実が受け止められない。
挨拶もそこそこに車に乗せられた。
ロシア人と私、それから中国人のオッサン2人が車に乗り込む。
しばらくして前の席の運転していない方がマウリシオと分かったが、なんだか釈然としない。
マウリシオは、でっぷりとした笑顔の可愛いおじさんだった。
ロシア人の美女はアンナと言った。
アンナはロシア語、ドイツ語、スペイン語、英語を操った。
彼女はマウリシオと英語でコミュニケーションを取る中で、初対面にも関わらずすぐにマウリシオと呼んでいた。
私は、一週間たっても、一カ月たっても、1年後も、2年後も、ついには一度もマウリシオと呼ぶことができなかった。
イングリッシュネームと国際感覚
イングリッシュネームは、国際的には常識の範囲で、韓国人やフィリピン人など、イングリッ
シュネームを持っていない人はいなかった。
普段の呼び方から、wechatの登録名まで、それで通す名前になる。
公式の文書にもイングリッシュネームを記入する欄があるのも普通のことだ。
同じ東方言語に属する韓国人の外国人外教はジェニファーと言った。
ジェニファーと言っても本名は林であった。
混血などではない。
純粋な韓国人。
しかし、欧米人や外事の人と話す時はジェニファーになる。
彼女はアメリカで修士号を取っていたので、そこで必要だったのだろう。
彼女は英語がネイティブレベルで、一年半後、北京大学の博士に進んだ。
イングリッシュネームは誰が決めるのか
イングリッシュネームは誰が決めるのだろうか。
一般的には、大学の教授などが決める場合が多いのだという。
普通は学部卒ではなくて、大学院まで進んでいるか、これから大学院に進もうとしている4年生などが持っている。
おそらく英語や欧米の語学を専攻している場合か、欧米の大学に留学する場合である。
マウリシオの場合は、やはり専攻がイタリア語、ミラノ大学で修士を持っていた。
そういうわけで、イタリア風のイングリッシュネームになっているわけだ。
ジャパニーズネームもある
日本語専攻の学生にはジャパニーズネームがある。
私が中国語を教えてもらっていた大学院生は、女性なのに「ゆうき」という日本名を持っていた。
彼女の場合は自分で決めたらしい。
日本のドラマの登場人物からとったそうだ。
また、学部生の中でも「しずか」や「あやこ」などという名前で提出物を出してくる学生もいた。
なんだか昔風の名前だな~と思い、違和感しかなかった。
そもそも、無理に外国人の名前にするシステムにいまだに慣れていない。
イングリッシュネームまとめ
いかがだろうか。
これが世界の常識のようであった。
国際感覚で一番日本人がズレていると感じたのが、このイングリッシュネームについてと、大
学の価値についてであった。
とにかく外国では大学を出ていないと、単純労働者とみなされてしまう。
おかげで、うぃ~なのに一度でも海外に出れば高学歴を志向するようになってしまうのだ。
このような新しい常識を知り、中国は日本と違い国際国家なのだと思い知らされるのである。